男のコラム

毎週火曜日更新

このコラムは、タケタリーノ山口が己の魂の叫びを2003年に書いていたものです

第31回

先週からのつづき
俺は30分ぐらい店内を物色し、ビデオを借り、店を出て、傘立てを見た。
もちろんその間、お客さんの入れ替わりも激しく、傘立てには何本も傘が置いてあった。
しかし・・・・・。
しかし、俺の傘が無い。
案の定だ。
やった。
やられたけどやった。
自信から確信に変わった。
盗むんだ。
人は、こういう日は傘を盗むんだ。
俺はこの結果に満足した。
こんなにも自分の傘が盗まれて胸がスカッとするなんて。
俺は悟った。
人間は自分が予測したとおりの結果になると、目の前に起こった出来事の善し悪しより、当たった事の喜びの優越感の方が大きくなるものだと。
俺は、この結果をふまえ、この傘立ての中で、1番盗みやすいであろうと持ち主が予測できるような、そして、盗まれて胸がスカッとするような傘を取り、レンタルビデオ屋をあとにした。
最後に聞きたい。
皆さんは、盗んだ傘の持ち主と、ばったり出会ってしまった事はあるだろうか?
俺は、このあと、ちょっと離れたコンビニの前で、
「その傘は俺のだ」
と、30才位の男に指をさされ、発見されてしまった。
その時の口論の様子は、俺があまりにも格好悪かった為、ここでは控えさせてもらうが、ただ一つ言える事は、その男もしっかりと別の傘をさしていた。