男のコラム

毎週火曜日更新

このコラムは、タケタリーノ山口が己の魂の叫びを2003年に書いていたものです

第30回

皆さんは、突然雨が降り出した時、人の傘を盗んだ事があるだろうか?
先日、俺は近所のレンタルビデオ屋に行こうと、家のドアを開けると、ポツポツと雨が降り始めた。
俺は、しばし迷った。
傘をさして行くべきか、傘をささずに行くべきか。
たった今、雨が降り始めたという事は、すでにレンタルビデオ屋に入っているお客さんは傘を持ってきてはいないはずだ。
そんな時、俺の安っぽいビニール傘が傘立てに置いてあれば、盗んでいくであろう。
俺なら盗む。
しかし、そんな盗まれるかもしれないという勝手な予測の為に、俺が今傘をささず、雨に濡れて行くのも変な話だ。
石橋を叩いて渡るにもほどがある。
橋にさしかかる手前の地面をひたすら叩いてるようなものだ。
いや、むしろ自分のつま先を叩いてる感じだ。
俺は決心した。
勝負は時の運だ。
俺は傘をさしてレンタルビデオ屋へ向かった。
レンタルビデオ屋に着くと、やはり俺の予感は的中していた。
店内にはすでに15人程のお客さんがいるのに、傘立てには1本も傘が無い。
これは争奪戦だ。
間違いなく俺の傘は次の主に嫁ぐ事になるだろう。
そうなる前に傘を叩き壊してやろうかと思ったが、傘には何の罪もない。
俺はおとなしく傘立てに傘を置いて店内に入った。
もちろん、店内に持って入っても良かったのだが、こういう日に傘を持ってくると、盗まれるんだと確信する方が、1本の傘よりもよっぽど大事な気がした。
それに、俺はあとから入ってくるお客さんの傘を盗めばいいだけの話だ。
次週につづく