男のコラム

毎週火曜日更新

このコラムは、タケタリーノ山口が己の魂の叫びを2003年に書いていたものです

第3回

「俺は、この仕事40年やってんだぜ」
巣鴨駅周辺で風俗店の”看板持ち”やってるおっちゃんのセリフだ。
なぜだ?そのセリフを聞いた瞬間、俺の脳ミソはクエスチョンマークがクエスチョンマークを呼び、そのクエスチョンマークが行ったり来たりしてる内に重なり合い、解決不可能な大きな知恵の輪ができあがっちまう程、疑問に思っちまった。
なぜ40年もやっちゃってるのか?
40年っていうのは嘘かもしれない。けど、そんな事はどうでもいい。バカにしてる訳じゃねぇけど、誰でもできる仕事だと思ってた。
それを40年も・・・・。
でも、そのおっちゃんは自慢気だった。誇りに思ってた。
そこで俺は考えた。仕事は仕事だと・・・。
あえて”看板持ち”も立派な仕事だと考えはじめる。俺は考えはじめた。”看板持ち”の世界の事を。
仕事といえば、長くやってる人もいれば、新しく始める人もいる。って事は”看板持ち”の世界でも、先輩が新入りに仕事を教えるんだろう。
何て?
「ここに立って看板持ってるだけでいいから」
最初はそんなもんだろう。でも慣れてくると、どんどん注文つけるんだろうな。
「看板が目立つように、自分を消せ」とか、
「景色と同化しろ」とか、
「街の一部になれ」とか、
「カメレオンを尊敬しろ」とか。
で、新入りもよく分からないけど、仕事がうまくいくように、カメレオンの生態について研究したり。
「へぇ~基本は緑なのかぁ」とか。絶対無理なのに。
そして、先輩の看板持ってる姿の”存在感の無さ”に憧れたり。
通行人が自分の事を気がつかないで通り過ぎる喜びに充実感を味わったり。
で、やっぱり仕事終わってから、仲間同士で飲みに行ったりするんだろうな。
話題は当然仕事の話で。
先輩が「どう、仕事は慣れた?」なんて。
「はい、やっと自分も”人として”という言葉の意味の無さが分かってきました」とか言ってさ。
でも、先輩の言う事は違うんだろうな。
「夏にセミがとまれば一人前だ」とか、
「木と間違えられて犬にしょんべんひっかけられたら素質あるぜ」とか、
「周辺地図に載ったらヒーローだ」とか、
「カーナビで検索できるようになったら天下人だぜ」とか。
な~んて事を考えながら、最近看板持ち始めちまったぜ!バカヤロー!!