男のコラム

毎週火曜日更新

このコラムは、タケタリーノ山口が己の魂の叫びを2003年に書いていたものです

第37回

これは、俺が幼稚園の年長の時の話だ。
今でこそ俺は「孤高の男」と言われているが、その当時は「団体行動の男」と言われ、団体で行動していた。
俺としては、その団体の一味として鳴りを潜めていたつもりだったが、やはり世間は俺という男を放ってはおかず、いつの間にか、その団体で行動すると、「タケちゃん達」と呼ばれるようになり、俺は団体の一味のつもりが、団体の顔に成り上がっていた。
どこに行くにも、何をするにも、
「タケちゃん達はどうするの?」
「タケちゃん達も誕生会来てよ」
と言われ、俺はその団体全ての権限を手にした感じになっていた。
しかし、驚くべきことに、俺達の団体を「タケちゃん達」と呼ぶことが当たり前になっていくにつれ、なんと、その場に俺がいなくても、その団体は「タケちゃん達」と呼ばれるようになってしまったのだ。
そう、その団体は俺込みで「タケちゃん達」
だったはずが、グループ名「タケちゃん達」
になってしまったのだ。
そして、グループ名「タケちゃん達」という存在が浸透していくにつれ、
「今日A君の家にタケちゃん達来るけど、タケちゃんも来ない?」
などという質問が成立するようになり、仕方なく俺は、
「タケちゃん達が来るなら、俺も行こうかな」
と答え、
「タケちゃんが来るならタケちゃん達も喜ぶよ」
などと、一体誰が「タケちゃん達」なのか分からないような状態になっていた。
多分、今考えると「タケちゃん達」というのは、あくまでも俺と一緒に行動していた団体の事を指す訳で、俺は「タケちゃん達」ではなかったんだろう。
そして、気が付くと「タケちゃん達」は急激に仲間を増やし、園児達のほとんどが「タケちゃん達」のメンバーに入っていた。
そんなある日、俺は「タケちゃん達」のメンバーに呼び出され、こう言われた。
「タケちゃんもタケちゃん達に入れよ」
俺は断る理由もなく「タケちゃん達」に入った。
元々は俺きっかけで「タケちゃん達」だったはずの「タケちゃん達」に、あとから入った。
俺は「タケちゃん達」のメンバーの一人、「タケちゃん達の中のタケちゃん」に成り下がった。
しかし、やはり元々は俺きっかけで始まった「タケちゃん達」なだけに、俺はすぐに「タケちゃん達」のトップに登りつめ、「タケちゃん達」の顔になった。
そして、俺はまた以前のように、「タケちゃん達」の全ての権限を手にした感じに戻っていた。 ただ、俺はその後、なぜか「2代目タケちゃん」と呼ばれていた。